物理や数学に現れるほとんどの方程式は非線形方程式であり、もとの方程式を大域的な性質を保ったまま差分化することが難しい。しかしながら、可積分方程式には、ソリトン解と呼ばれる厳密解が存在するので、それを使って大域的な性質を保った差分化をする事が可能である。更にここ十数年の研究で、セルオートマトンの中にも可積分と呼んでよいものがあることが発見され、ソリトンセルオートマトンと呼ばれている。これは差分可積分方程式の特別な極限として得られることが、現在では知られている。 今年度の研究では、行列型のBacklund変換方程式を中心にソリトンセルオートマトンの数理構造の探索を行い、以下の成果を得た。 ●Max Plus方程式の性質の解明 ソリトンセルオートマトンは差分可積分方程式の特別な極限として得ることが出来き、この極限操作の中で足し算と掛け算は、最大値を取るMaxと足し算に移る。しかしながらMaxと足し算の計算には、掛け算と足し算の場合にはなかった不定性があるため、代数方程式の計算方法の時点で不明な点が多い。例えばMaxと足し算の方程式にGroebner基底や終結式に相当する概念があるのかは不明である。 この研究では低次の方程式で、連立方程式の個数が少ない場合に、 ・解がいつあるかを知るための判別式がある事 ・終結式に相当する概念もある事 を明らかにした。 ●差分可積分方程式の保存量についての研究 可積分方程式の解の振る舞いを明らかにしようとする際、その方程式の保存量が役に立つ事が良くある。しかしながら差分可積分方程式の保存量の求め方にはまだ分からない点が多い。この研究では、Backlund変換方程式を特別な形にしなくても、簡単な行列式の計算だけで保存量を求める方法があることを明らかにした。
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