本研究の目的は、フィードバック機構を用いることにより初めて創成される動的秩序形成の提案とその制御である。具体的には、自己組織化における時間・空間的秩序構造の代表的な例として知られる、Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応を用いた秩序構造の制御を実験・数値実験・解析・数値解析を用いて多面的に捉え、生体信号処理や自然現象の理解や制御に繋げる。また、得られた知見から情報処理に応用することである。 申請者は、リアルタイム光フィードバックシステムの開発、ラセン状化学反応波の安定化と伝搬方向の制御(BZパケットの実現)、BZパケットに対する曲率方程式の導出とそれによる数学的解析などを行なってきた。これらの結果は、光刺激をもちいたネガティブフィードバック機構を加えることにより、化学反応レベルでの情報伝達(BZパケット)の粒子的伝播とその制御の可能性を示してきた。本年度は、光ノイズ刺激に対するBZパケットの応答性や平成15年度に提案した曲率方程式の改良とそのモデルによる数値計算、および、数学的解析を試みた。数値計算、解析とも、BZパケットの定性的振舞いをよく説明できることが示され、その結果を論文として投稿中である。今回提案した曲率方程式を用いたモデルは、時間・空間的秩序構造の代表的な例である、2つのコアを持つラセン構造をも説明できることが示され、その結果を論文として投稿準備中である。 BZ反応パターンにフィードバックを加えることにより、入力画像のエッジ検出など画像処理が行なえることを提案した。また、様々な入力画像に対し得られるパターンと人間の錯視現象の類似性を示した。これらは、自己組織化パターン形成が情報処理に応用できる例である。これらの結果を論文投稿準備中である。
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