本年度は、量子情報の符号化・復号化に関する量子一方向的関数の導入に向けて、昨年度に引き続いて量子ビット系・連続変数系・離散多準位におけるエンタングルメントの新しい性質の探索と量子情報処理への応用に関する研究を行い、次のような成果を得た。 量子ビット系に関しては、多量子ビットエンタングルメントを用いて2量子ビットに符号化した量子情報を、エンタングルメント資源を用いずに復号化するための必要十分条件を応用することで、量子情報の安全な条件付通信を可能とするような量子暗号プロトコルとして、量子鍵プロトコルを提案した。この研究成果は、英国での国際会議で発表され、論文は現在投稿中である。 連続変数系に関しては、離散変数系には現れない連続変数系独自のエンタングルメントの性質(純粋状態で相互変換不可能な状態が存在すること)が、エネルギー有限で情報の出力量も有限であるような、物理的な系において無限に存在することを示した。この結果は既に出版されている。 離散多準位系に関しては、エンタングル状態に符号化された古典情報を分離可能な操作のみで確実に復号化するための条件を考察することで、離散多準位多粒子系における、操作的な意味を持つエンタングルメントの測度を見出した。この測度によって、古典情報を量子情報に符号化・復号化する際での符号化・復号化に必要な資源の非対称性を解析することが可能となるため、応用面も期待できる。この結果は、現在投稿準備中である。
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