本年度は、最初の信号を観測するための実験装置の設定が順調にほぼ完了した。現在、有意な信号を得るために、信号の精度をあげている状態で、まもなく測定できる予定である。以下、今年度の進展について、詳しく述べる。 まず、実験において中心的な役割を果たすレーザーシステムを構築した。レーザー本体は、市販のレーザーダイオードを使い、外部共振器型のレーザーを自作した。そのレーザーの周波数安定化のためのロック回路も自作し、安定に動作している。また、周波数を掃引するための機構も導入できた。 第二に、サンプルの用意が完了した。当初は、真空装置内のルビジウムもれ出しビームを使う予定だったが、極めて薄い(間隔0.2ミリメートル)ルビジウム蒸気セルを使うことで、実験の第一段階として、当初の計画と同等の実験を行えることを発案した。これにより、労力とコストをかけずに、実験の準備が進んだ。その薄いセル内のルビジウム原子の分光にもすでに成功した。 第三に、周期的磁場を用意した。これは、周期的に銅線を配線したプリント基板で、上記のセルを上下から挟むことによって行った。周期は1ミリメートルと当初の計画より長いが、胃電流の大小で場の強さを自由に変えられるため、初期の基礎データを収集するにはふさわしいシステムである。 そのほか、均一な外部定磁場を作るためのヘルムホルツコイル、精度良くレーザー光を観測するためのフォトダイオード検出器なども作成し、実験の準備をほぼ終えた。
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