本年度は、イッテルビウム光格子時計開発の第一歩となる、レーザ冷却・トラッピング用の光源と、超高真空装置の設計、製作を行った。 1.開発速度向上のために第一段冷却を省略することとし、波長399nmのレーザは原子線の冷却のみに用いることとした。この目的で、波長399nmの外部共振器付半導体レーザシステムを構築し、Dichroic Atomic Vapor Laser Lock (DAVLL)法により、イッテルビウム放電管を用いた周波数安定化を施した。有効に使用できるレーザパワーは15mW程度であった。 2.狭線幅磁気光学トラップ生成に用いる波長556nmのレーザを、波長1112nmのファイバレーザの第2次高調波発生により得た。位相整合温度や波長変換効率などの特性評価を行った。このレーザ光の周波数安定化のためにイッテルビウム原子線装置を製作した。 3.超高真空装置の設計、製作を行った。これは、標準的な、ゼーマン減速器中で原子ビームを減速し、磁気光学トラップに捕獲する形式を用いた。ヒータ過熱オーブンと、ハニカムノズルを用いることで、よくコリメートされた原子ビームを生成した。原子線生成時の磁気光学トラップ用チャンバ内の圧力は2x10-9torrであった。さらに、この原子線に、1.で準備した波長399nmのレーザを照射して、その蛍光を観察した。原子線減速用レーザを入射するビューポートに紫外線LED光を照射することで、表面に付着したイッテルビウム原子を脱離できることを確認した。この作用は、ビューポート表面の清掃のみならず、光によるフラックス制御可能な原子線源としても利用できる。
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