近年、溶液中におけるデンドリマー高分子系の物理化学的性質に関して興味がもたれている。デンドリマーは、ナノテクノロジーの分野において様々な応用が期待されており、中性子散乱等に基づく実験的研究が盛んに行われている。具体的には、高分子のconformationや、構造因子の波数依存性などに関して調べられているが、未解決の問題が数多い。このような問題に関しては、分子シミュレーションによる解析が極めて有効な手段である事が期待される。しかし、溶液中の高分子系における静電相互作用を正確に取り扱う事は、計算時間が膨大となるため一般に困難であり、今まで十分な研究が行われてこなかった。 本研究では、電解質溶液中におけるデンドリマー高分子系に関して並列分子動力学シミュレーションを行い、上記の問題に関して定量的に調べた。特に、溶液中における静電相互作用の強さと構造形成の関係について、系統的に明らかにした。これらの結果から、溶液中における系の熱力学的性質に関して、最近の実験結果を解釈する上で有益な知見が得られた。
|