化学的に架橋した高分子2元混合物や高分子共重合体のミクロ相分離を記述する連続場モデルを構成した。相転移に伴う高分子鎖の歪みと、架橋によって生じる不均一性の効果を取り入れることにより、実験で見られているランダム双連続ドメイン構造や、散乱因子の非対称ピークを定性的に初めて再現した。さらにランダム性の原因としてベクトル型(応力不均一性)とスカラー型(濃度不均一性)の2種類を比較し、実験との一致から後者が実現されている可能性を指摘した。 アクティンやDNAなど硬い高分子の溶液において、高分子鎖の絡み合いと力学応答(粘弾性)との関係を探るため、以前研究代表者らが開発したBrownian動力学シミュレーション法を、Ralf Everaers氏(Max-Planck複雑系物理学研究所)との共同研究により発展させた。予備的な結果として、柔らかい高分子と硬い高分子の中間領域における弾性率が、スケーリング解析の予測とよく一致することが確認された。 真空蒸着によって形成される固体薄膜が冷却時に示す皺状の剥離パターンを理解するため、薄膜の弾性と基板との粘着相互作用を取り入れた連続場モデルを構成した。薄膜と基板の熱膨張率の違いにより生じる水平方向の圧縮歪みの大きさを変えて数値シミュレーションを行なったところ、小さい歪みでは剥離は核生成によって起こり、大きい歪みでは弾性エネルギーが時間の-0.45乗で減衰するという結果を得た。
|