NIPAゲル中のマイクロエマルション微粒子の構造について小角中性子散乱(SANS)実験を行った。今年度は、マイクロエマルション微粒子の代わりに、非イオン性界面活性剤C_<12>E_5からなるミセルをNIPAゲル中にトラップさせる事により形成される構造について検討した。昨年度調べたマイクロエマルションからオクタン相を取り除く事により、球状粒子サイズは半径がおよそ1/4になる事が予想される。 NIPAゲル中で作られるC_<12>E_5ミセルは高分子ゲル中に分散し、透明なゲルを形成する事が明らかとなった。この点は粒子サイズが小さくなる事によってゲルの不均一性が抑制されるとして理解する事ができる。しかし、測定したSANSプロファイルの解析から、ミセルは一様分散している訳ではなく、ドメイン形成している事がわかった。すなわち、粒子サイズを小さくしても、ミクロに相分離する傾向は変わらない。この事は、枯渇相互作用による相分離の傾向は粒子サイズに依存しない事を示す。 一方、温度変化による相転移の様子はオクタンが存在するか否かで異なる事もわかった。オクタンが存在する場合は、温度上昇に伴う界面活性剤膜の自発曲率変化によって球状構造はラメラ構造へと転移し、その後、NIPAの体積相転移温度を超える事によって内部のマイクロエマルション構造はゲル外へ吐き出され、不可逆な相転移を示す。しかし、オクタンが存在しない場合は、温度上昇に伴い、NIPA鎖が疎水的になる事に由来して、界面活性剤ミセルが高分子鎖と親和し、ゲル内部のドメイン構造が消失する。NIPAゲルの体積相転移温度の上下では可逆的にミセル構造とミクロドメインの消失が引き起こされる。 以上の結果から、NIPAゲル中の界面活性剤微粒子は枯渇相互作用により相分離するが、濃縮相において秩序構造を形成し、温度誘起転移を示す事が明らかとなった。また、活性剤の種類を変える事によって高分子鎖との相互作用を調整する事ができ、これによってナノスケールでの構造を制御する事ができる可能性が示唆される。
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