両親媒性分子の自己組織化機構を分子レベルで解明するため、我々は溶媒分子(水分子)と溶質分子(両親媒性分子)を共に粒子として顕わに扱う分子動力学(MD)シミュレーションを行った。シミュレーションモデルとして、Goetz等(独・マックスプランク研究所)のモデルを拡張した粗視化モデルを用いた。親水基は一つの粒子として扱い、疎水基は二つの粒子が連結した鎖状分子として扱った。また、両親媒性分子はまっすぐな剛体棒、溶媒分子は一つの粒子として扱った。親水基と疎水基の間の相互作用は、ソフトコア・ポテンシャルで表し、親水基同士および疎水基同士の間の相互作用は、レナード-ジョーンズ・ポテンシャルで表した。さらに、親水基と溶媒分子および溶媒分子同士の間の相互作用は、レナード-ジョーンズ・ポテンシャルで表し、疎水基と溶媒分子の間の相互作角は、ソフトコア・ポテンシャルで表した。MDシミュレーションのアルゴリズムとして蛙飛び法を用い、系の温度を一定に保つため速度スケーリング法を適用した。粒子密度は一定であり2/3とした。また、境界条件として周期境界条件を用い、初期配置はランダムな配置とした。様々な両親媒性分子濃度でMDシミュレーションを行い、分子集合体の形成過程を分子レベルで解析した。その結果、両親媒性分子濃度が比較的希薄な場合、初期においてランダムな配置をとっていた両親媒性分子は、両親媒性分子同士の相互作用および溶媒分子との相互作用により、いくつかの、ミセルに凝集することが分かった。また、ミセルは合体と分裂を繰り返し、時間の経過とともにダイナミックに変化することが分かった。
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