研究概要 |
生体膜やナノスケールの膜構造のモデルとして注目されている系として,界面活性剤分子が水中で自己会合して形成する両親媒性分子膜の圧力印加した場合の構造変化を調べ,圧力変化による構造形成要因の解明を目的とした.本研究では,まず(1)高圧環境を実現する高圧容器の開発を行った.高圧容器は光散乱実験やX線散乱実験にも応用可能である顕微鏡観察用の高圧容器を開発した.またこの高圧容器の特徴は2000気圧,200℃の特殊環境が実現可能であり様々な空間スケールからの構造観察が可能である.さらに,(2)非イオン性界面活性剤(C16E6)・水の2元系における圧力効果を中性子小角散乱法により調べた.加圧によって90MPa付近で紐状が絡み合ったミセル相から,界面活性剤膜の繰り返し距離dが60A^^.程度のラメラ相へ相転移したことが分かった.ラメラ相での圧力変化も同様に調べた結果,常圧でd=117A^^.であった繰り返し距離が110MPaでd=60A^^.程度に減少し,ミセル相で加圧して出現したラメラ相と同じ面間隔となることが分かった.このことから,ミセル相では紐状のミセルの絡み合いが圧力によって融合し膜が形成する一方,ラメラ相では圧力を加えることによって膜の熱揺らぎが抑えられ膜の繰り返し距離が減少したと考えられた.これらの結果を踏まえ,(3)中性子スピンエコー法によりラメラ相で圧力を加えたときの熱揺らぎ運動の大きさを測定した.中性子スピンエコー用の高圧容器は技術的な問題から中性子散乱強度を上げることが困難であり熱揺らぎ運動を測定することができなかった.
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