研究概要 |
本研究では,より詳細かつ正確な上部マントル内部の3次元不均質構造を探るために、不均質媒体を伝播する表面波の散乱・回折といった複雑な効果を考慮した新しいインバージョン法の開発と応用を主な自的としている.今年度は,新手法の基礎となる新しい理論とその数値計算手法の開発を行った.この方法では,波線周辺領域からの散乱波の影響も考慮するため,従来の波線理論に基づく手法に比べて膨大な計算量が必要となる.実際のデータに応用する際には,個々のデータ毎の分散処理が可能であるため,並列処理を行うことで計算時間の短縮を図ることができる.そこで高速PCを16台購入し,これらをギガビットLANを介して並列接続することで高速並列計算機を製作した.さらに,効率的に数値計算を行うための計算手法の工夫と並列計算プログラムの作成を現在進めている.一方,新手法によるトモグラフィーの分解能に関するテストも行い,従来の方法に比べて分解能と信頼性の高いモデルが得られることが明らかとなっている. 本研究に関連した成果は,EGS-AGU-EUG合同学会(フランス・ニース)やIUGG総会(札幌)といった主要な国際学会や,日本地球惑星科学関連合同大会(幕張)において発表を行っている.さらに,本研究に関連した研究論文を,国際誌及び国内誌にそれぞれ1本ずつ発表し,さらに,新しいインバージョン手法に関する成果のレビューを国内誌に1本投稿中である.また新手法の理論に関する論文も現在,国際誌に投稿準備を進めている.また今年度はオーストラリア国立大学・地球科学研究所に約2週間滞在し,本研究で開発中の新手法の検討を行うと同時に,本研究の更なる発展について,関連研究者と議論を行った.
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