本研究課題の最大の焦点は、高圧相のレオロジー特性の研究であり、下部マントル条件下で主要構成鉱物であるペロブスカイトとマグネシオヴスタイトの変形実験をマルチアンビル型高圧発生装置を用いて行うことである。しかしながら、この実験には、1)下部マントル条件の実験室での再現、2)マルチアンビルを用いた変形実験、という困難さを含んでいる。そこで、本年度は、主に以下のような研究を行った。1)マグネシオヴスタイトの拡散に関する研究。これは、下部マントル条件を再現するということの達成を目的としていた。この実験シリーズでは、圧力約35GPaまで行われ、これは地球深部およそ900-1000kmに相当し、十分下部マントルを再現している。この技術を用いて、「研究発表」欄に記されている研究成果を得ることができた。この得られた結果は、変形実験とは違う側面からのレオロジー特性を表しており、十分に研究課題としての成果と考えられる。2)マントル遷移帯の主要構成鉱物であるリングウッダイトの変形実験。ここでは、圧力およそ20GPaで実験が行われた。この圧力は、下部マントルより浅部に相当するが、マルチアンビル型装置を用いた変形実験の可能性を示す重要な結果であったと思われ、現在、EBSD装置やTEM装置による試料の解析を行っており、さらに学会等での発表の準備を進めているところである。今後は、上述の2点を組み合わせ、下部マントルでの変形実験を行っていく予定である。
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