本研究の最初の目的は、画像ないし数値地形図から測地基準点候補となる地形特徴を自動抽出するアルゴリズムの開発・実装である。昨年度は、一般化ハフ変換を用いたクレーター自動抽出アルゴリズムならびに小惑星探査機はやぶさ望遠カメラ画像に基づく形状復元手順について、検討ならびに予備的実装がなされた。それら2項目は精密化・自動化が進められ、今年度新たにリッジ・グラーベンといった線状地形の自動認識アルゴリズムへの拡張ならびに目的を支援する月惑星GISデータベースの検討の2つが加えられた。 昨年度に検討・予備的実装がなされた2項目は、地球惑星科学関連学会合同大会、Committee on Space Research meeting、宇宙技術および科学の国際シンポジウム、はやぶさ国際シンポジウム、そして36th Lunar and Planetary Science Conferenceにて発表されている。特に、はやぶさ形状認識に絡む内容は理学的インパクトと導出原理それぞれに力点を置いた査読付論文2本にまとめられた。 今年度検討された2項目のうち、線状地形については従来手法の歩留まり向上を目指し、月惑星GISデータベースについては地球との違いを克服する方法の検討に力点が置かれた。前者については最初のエッジ検出の効率が全てを決めるまでに至った。後者は、地理・地心緯度といった測地系の違いを吸収し、かつ多数のラスターデータの可視化機能強化のメドが立った。また、2005年秋に到着予定のはやぶさ・ターゲット小惑星イトカワの運用・可視化ツールHARMONICS (HAyabusa Remote MONItoring and Control System)は、米国JPLで開発・公開されているSPICE Toolkitの改良コードを加えて大体の形が整えられた。これも最終的には不規則形状小天体のGISプラットフォームに統合する方向である。
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