[目的]: 八丈島の群発地震活動に伴って観測されたおよそ10秒の振動周期をもつ超長周期地震の発生プロセスの解明を行うとともに、他の火山の群発地震活動に伴い類似の現象が発生していたかどうかの探査を進め、超長周期地震とマグマ貫入プロセスと関連性を解明することが本研究の目的である。 [実施内容]: 八丈島の超長周期地震のスペクトル解析から求めた周波数および減衰を表すQ値の時間変動を、クラックモデルを用いて定量的な解釈を行った。さらに2004年9月から始まった浅間山の噴火に伴う広帯域地震データの解析を行い、超長周期地震の探査を行った。 [成果と効果]: 八丈島の超長周期地震の活動初期には、周波数およびQ値の系統的な時間変化が見出された。クラックモデルを用いて解釈を試みた結果、これらの時間変動はマグマを含むクラック(ダイク)の長さ、幅および厚さが徐々に増加することにより説明できることが分かった。これは群発地震に伴って起こったマグマの貫入のプロセスに対応すると解釈できる。周波数とQ値はこの系統的な変化の後、およそ半年にわたってほぼ一定の値をとっており、溶けたマグマが長期にわたって存在していたことを示している。このような長期にわたって溶けたマグマが存在するためには、ダイク内でマグマの対流が必要であることがわかった。一方浅間山では、データ解析を行った噴火後においては同様のシグナルを検出することはできなかった。しかしながら、噴火前に超長周期地震が観測されたことが他のグループによって報告されており、超長周期地震がマグマ移動に伴う一般的な現象であることが示唆できる。
|