「海半球ネット-ワーク計画」(OHP計画)によって、1999年11月〜2000年7月の期間にわたり、フィリピン海横断測線において、広帯域海底観測が行われた。この観測によって得られた地震波形記録、日本列島、グアム島、ポナペ島の陸上観測点の広帯域地震波形記録を用いて、2観測点法により、横断側線と日本列島に挟まれたフィリピン海北部地域の表面波位相速度を求めた。この解析により初めてフィリピン海内の詳細な位相速度構造が得られた。得られた位相速度構造を太平洋の位相速度構造と比較した結果、同じ海洋底年代で比べると、フィリピン海の位相速度が遅いことが示された。このことは解析地域のS波速度が太平洋に比べて遅いことを意味する。この結果と、解析地域での他の地球物理学的結果、地質学的結果をあわせると、解析地域のマントルが鉄に富んでいると考えられる。 Nakamura & Shibutani (1998)で用いられた位相速度に加え上記の解析に用いた位相速度を用いて、トモグラフィー手法により、フィリピン海地域全体の2次元表面波位相速度構造を求めた。Nakamura & Shibutani (1998)においても、フィリピン海内部の解像度は良好であったが、マリアナトラフ北部からパレスベラ海盆北部にいたる領域の解像度は若干低かった。今回、フィリピン海北東部のデータが加わったことにより、解像度が改善された。この結果、データの増加したフィリピン海北東部の速度コントラストが鮮明になった。また、マリアナトラフからパレスベラ海盆南部の低速度が長周期側でも明瞭であること、パレスベラ海盆北部から四国海盆南部にかけて高速度の領域が存在するという違いがみられた。
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