研究概要 |
フィリピン海プレートは地震と観測点の地理的な制約のため、十分な解像度をもつ3次元上部マントル速度構造を得ることは難しかった。近年、フィリピン海プレート周辺域での陸上広帯域地震観測点数が増加し、また、広帯域海底地震計による地震観測が行われた結果、この構造を従来より格段に高解像度で求めることが可能となった。そこで我々は表面波を用いてこの地域の上部マントルS波速度構造を求めた。 110E〜165E、15S〜45Nの範囲内に発生した地震(1990.1-2003.3の期間)と広帯域地震観測点を用いる。陸上観測点(31点)はMb6.0以上、自己浮上型海底広帯域地震計を用いた観測点(20点)ではMb5.5以上の地震による地震波形の上下動成分を解析に用いた。 Neighborhood Algorithmを用いた完全非線形な波形インバージョン法(Yoshizawa & Kennett, 2002)を用いて、基本及び高次モードのレイリー波位相速度を測定した。得られた位相速度は基本モード(40-160秒)1087、一次モード(40-100秒)82、二次モード(40-100秒)142、三次モード(40-100秒)95波線である。このうち海底地震計によるデータはそれぞれ127、6、14、3波線である。得られた位相速度を、Yoshizawa & Kennett (2004)による周波数毎の波線経路ずれや有限波長効果を考慮した表面波トモグラフィー手法(Three-stage inversion法)に適用し、3次元S波速度分布を求めた。 解析の結果、フィリピン海プレートの深さ250kmまでのS波速度構造がよく求められた。太平洋プレートが速く、伊豆小笠原島弧、沖大東海嶺、大東海嶺、マリアナトラフが遅い。また、フィリピン海プレートの中では、西フィリピン海盆の速度が速い。これらは表層のテクトニクスと調和的である。また太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込む様子が明瞭に見える。
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