研究概要 |
昨年度までに得られていた部分凍結状態の安定性を調べるために,大気-海洋混合層結合モデルの開発と結合モデルを用いた数値計算を行った. モデル開発に関しては,まず大気モデルの再構築を行った.大気モデルの仕様としては昨年度までに用いていた大気大循環モデルと同様であるが,Fortran90のモジュール機能・配列式を活用し可読性と可変性を考慮したコーディングを行った.ごく簡単な物理過程も組み込み全球が海洋に覆われた水惑星条件での数値計算を行えるようにした.昨年度開発したデータ入出力ライブラリgt4f90ioを利用する形でパッケージングを行い,dcpamと命名しネットワーク上に公開した(公開URLはhttp://dennou-k.gfd-dennou.org/arch/dcpam/).次に,海洋混合層モデルの実装をおこなった.Xie and Saito(2001)と同様の海洋混合層モデルを使用した.混合層の厚さを50mとし,大気最下層の風応力によるエクマン輸送と混合層の下の層からのエクマンパンピングの効果を考慮した. 大気大循環モデルに海洋混合層モデルを組み込んで,もっとも大きな氷面積をもつ部分凍結状態についての数値計算を行った.初期条件として,太陽定数の値を1300W/m^2から徐々に減少させて得られた部分凍結状態を用いる.この状態が得られるかどうかは初期値に依存するので他の部分凍結状態に比べて安定性が弱い可能性がある.そのため海洋の熱輸送などの効果を入れた場合には全球凍結状態に移行するということも考えられる.しかし,エクマン流による海洋温度の移流の効果を入れた数値計算を行ったところ平均的氷境界緯度は22度に保たれることがわかった.エネルギーバランスモデルでは得られない氷面積が大きい部分凍結状態はそれほど安定度が小さいというわけではないということが示唆された.
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