本研究では、大気中水素濃度の高精度分析システムを確立し、大気中水素の空間的、時間的変動を地球規模で明らかにすることを目的としている。そのだめ、平成15年度には、主に分析装置の開発に重点を置いた。以下にその結果をまとめる。 (1)酸化水銀還元法による還元ガス検出器を、水素分離用カラム内蔵のオーブンと組み合わせ、水素分析システムを構築した。水素検出器を改良し、回路の電気的なノイズレベルを下げることで、水素分析の精度を大幅に向上できることがわかった。信号処理系には、水素分析に特化した独自の波形処理プログラムを作成し、精度の高い定量方法を確立した。標準ガスやサンプル空気などのガス導入系、及びサンプルを採集するための金属容器には、既に開発済みであるスチーム洗浄酸化皮膜法を施し、水素分子の吸脱着を極力抑えた。 (2)長期安定な水素標準ガスを製造するための準備作業として、スチーム洗浄によってステンレススチールの容器の内面にも酸化皮膜を作り、金属内部からの水素ガスの発生による水素濃度のドリフトが抑制できることを確認した。さらに、ガスシリンダーに同じ処理を施して標準ガスを製造し、今後繰り返し長期分析することで安定性を確認することとした。 (3)国立極地研究所と協力して、南極においてガラスフラスコに採取されたサンプルを分析し、その水素濃度を計測した。ガラス容器においても長期ストアリングの影響によって、濃度ドリフトが生ずることを確認した。
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