研究概要 |
1998年に行われたGAME(GEWEX Asian Monsoon Experiment)集中観測データに基づき4次元同化行ない、チベット高原の熱・水収支に関して解析的に明らかにした論文がアメリカ気象学会誌Journal of Climate掲載された。この論文はGAME再解析データを用いて、η面での熱水収支の解析手法に基づき、チベット高原上でのQ_1,Q_2解析を行っている。これまではプレモンスーン期における大気加熱は顕熱加熱が主要な要因であるとされてきたが、本研究ではこの加熱に加え、降水による凝結熱加熱の重要性を指摘した。 また、イギリス気象学会誌International Journal of Climatologyにはユーラシア大陸における大気・陸面相互作用に関する論文が掲載された。地球温暖化に伴い、高緯度帯での融雪量やその時期について関心が高まっており、またこの地域の冬から春にかけての積雪被覆は、はるか離れた夏のアジアモンスーンを変調させるという学説も多く提出されている。この論文は旧ソビエト連邦の地点観測データとECMWFの客観解析データに基づき、気候学的な雪線の後退を明らかにし、次にそれらの変化をもたらす大気循環場の変動について、季節変化と経年変動スケールの視点から解析している。とくに消雪時期の変動と地表面気温との関係を調べたところ、これまで指摘されてきた「地表面の気候メモリ」が必ずしも明瞭ではないことが明らかになった。
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