研究概要 |
近年、積雲対流により励起され鉛直伝播する小規模重力波が、成層圏・中間圏において果たす役割の認識が高まっている。研究代表者は、前年までに世界に先駆けて、積雲対流を陽に再現する領域気象モデルを用いて地表から高度100kmまでの大気重力波をシミュレートすることに成功した。本年度は、中間圏界面(高度100km)付近での重力波の砕波に注目し、様々な数値実験により研究をさらに発展させ、また、新たに大気光への影響の過程を明らかにした。 まず、モデルの水平・鉛直解像度を変えた一連の実験を行い、これまでの比較的低解像度(水平1.5km,鉛直0.5km)な実験で見いだされた重力波の砕波が、定性的に正しいことを確認する一方で、より高解像度(水平0.5km,鉛直0.3km)な実験により砕波のメカニズムを詳しく診断した。さらに、計算結果より、大気光の一つである酸素原子の557.7nmの発光強度を見積った。これにより、大気光の地上観測にしばしば見られる縞構造がモデルで再現されることが明らかになった。結果の詳細な解析を通じ、モデル中の砕波においては、幅10km程度の縞模様を産み出す秩序構造と、より小規模な乱流が共存していることが明らかになり、また、この結果が大気光観測に見られた著名な砕波現象を説明することも示した。(以上Horinouchi,2004) 次いで、本研究を電離層擾乱の研究に応用した。領域気象モデルによる地表から高度110kmまでの計算と、電離層プラズマモデルを組み合わせることで、スポラディックE層におけるプラズマ擾乱生成のメカニズムに、今まで知られていなかったものがあることを見いだした(Yokoyama, Horinouchi, Yamamoto, Fukao, JGR投稿中)。また、上記の研究以外にも、幾つか理論及び観測に関する成果を得た(発表論文)。
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