研究概要 |
エアロゾルは直接・間接効果により地球大気の放射収支の平衡状態に変化をもたらし、地表気温・雲・風・大気安定度等の変動に寄与すると考えられている。しかし、エアロゾルと気象場とのフィードバックを定量的に解析した研究は過去にほとんど例がない。そこで本研究では、研究代表者がこれまで開発してきた大気大循環モデルをベースとしているエアロゾル輸送・放射モデルSPRINTARSを用いて、エアロゾルの気象場に対する影響を評価する。 今年度はまず、これまで客観解析データの風・気温・比湿を用いて気象場にナッジングをかけながら使用することが多かったSPRINTARSについて、大気大循環モデルで予報される気象場を用いてエアロゾル分布の再現性が妥当であるかのチェックを行った。様々な観測値と比較をしたところ概ね良い一致が見られた。次に、気象場の変動を評価するためには海洋モデルが必要であるため、SPRINTARSと海洋混合層モデルを結合した実験を開始した。エアロゾル間接効果を評価する際の重要なパラメータである雲粒径・雲水量・降水量に関して実験結果と観測値とを比較したところ、概ね良好な一致が見られた。本研究による人為起源エアロゾルの直接・間接効果放射強制力は、それぞれ-0.1Wm^<-2>,-0.8Wm^<-2>と計算された。以上の実験結果は、IPCC第4次報告書(2007年発行予定)に貢献できると思われる。 また、SPRINTARSによるエアロゾル分布の再現性の検証となる東アジア域に着目したシミュレーション結果を論文として発表した。
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