エアロゾルは直接・間接効果により地球大気の放射収支の平衡状態に変化をもたらし、地表気温・雲・風・大気安定度等の変動に寄与すると考えられている。しかし、エアロゾルと気象場とのフィードバックを定量的に解析した研究は過去にほとんど例がない。そこで本研究では、研究代表者がこれまで開発してきた大気大循環モデルをベースとしているエアロゾル輸送・放射モデルSPRINTARSを用いて、エアロゾルの気象場に対する影響の評価を行った。 昨年度は、簡易海洋モデルと結合した大気大循環モデルで予報される気象場を用いてエアロゾルの全球分布の再現性が妥当であるかのチェックを行い、その後、エアロゾルの気象場に対する影響を具体的に評価するための数値実験を開始した。本年度は実験を継続し、シミュレーションから得られた結果の解析を行った。特に人為起源エアロゾルの直接・間接効果による地表気温・雲水量・降水量・雲粒径等の変化に着目し季節・地域毎に詳細に検証した。その際に、雲・降水量に関する観測データを使用してシミュレーション結果との比較を行い、エアロゾル・雲相互作用を考慮した雲粒・降水スキームの妥当性を確認した。シミュレーション結果の解析により、人為起源エアロゾルは、雲の反射率増大に寄与する雲粒径の減少(エアロゾル第1種間接効果)を全球規模で起こす一方、降水量の変化に関しては、エアロゾル直接効果及び第1種間接効果による気温変化に伴う水循環の変化のシグナルの方が、雲粒径の減少による降水量の減少(エアロゾル第2種間接効果)のシグナルよりも大きいことが示唆された。ただし、人為起源エアロゾルの多い東アジア域や北大西洋域では、第2種間接効果の傾向が見られた。また、人為起源エアロゾルは、人為起源温室効果気体による地表気温の上昇を40%抑制することが示された。 本課題の研究成果は学術雑誌に投稿し受理された。
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