研究概要 |
中間圏界面付近の波動現象を観測するために,夜間大気光を用いた光学観測が幅広く行われている.特にOH(6-2)P帯大気光を用いて回転温度を推定する方法は一般的であるが,幅広いスペクトルを得るために複数の干渉フィルターを用いるなど光学系には工夫が必要である.そこで本研究では装置の小型化を目指して別の波長帯を用いた回転温度推定法の開発に取り組んでいる.本年度は,名古屋大学太陽地球環境研究所で開発された新型分光計に,新たに設計したOH(7-3)R帯用干渉フィルターを搭載して,OH大気光の試験観測を行うことができた.観測されたスペクトルから回転温度推定を試みているが,現在のところまだ理論スペクトルとのずれが大きく,推定された回転温度は,同時に観測されたOH(6-2)P帯スペクトルから推定したものより約20度高く推定されていることがわかった.このずれの原因については光学系の絶対校正方法の問題点と理論スペクトルの問題の両方が考えられており,今後の検討課題である.試験観測は短期間であるが,観測結果から大気温度が時間とともに変動する波動現象が捉えられている.この波動を抽出し大気波動の活動度を評価する方法を予備的に開発中である.同分光計は試験観測のあと平成16年2月にインドネシアへ移設され,今後観測を継続する予定である.本年度購入した干渉フィルターは他の分光計にも搭載予定である.
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