研究概要 |
本研究課題では、沿磁力線電流、Sqダイナモ効果を繰り込んだ電離層電流の全球過渡応答モデルの開発を進めてきたが、今年度は、昨年度までの成果をさらに発展させ、電離層電流分布モデルを従来の2次元高度積分型から、Hall, Pedersen current layerを異なる高度に分布させた2層モデルへと発展させることにより、電流系の3次元構造を解析するための新しい手法の展開に先鞭を付けることができた。 この手法により、従来の2次元モデルの範疇においてCowling効果の源とされていた、Hall電流の連続性が阻止されることによって生じる分極電場の生成メカニズム及び、その関連現象に全く新しい解釈が付け加えられることになった。特筆すべきは、Cowling効果が存在する領域に於いて、Primary電場による過剰Hall電流と分極電場によるPedersen電流が打ち消し合うとされてその実態が見えなくなっていた、primary電場と直交する2次元電離層電流を3次元的にみた場合、Hall, Pedersen電流がそれぞれ異なる高度を逆方向に流れ、その両者が分極電場のソース領域である電荷蓄積領域において鉛直電流を介してmeridionalに閉じているという新しい概念が得られたことである。 地球電離層では、オーロラジェット電流、赤道ジェット電流、Sq渦電流などCowling効果が顕在化する電流現象が多くあるが、本研究の結果、こうしたCowling領域においては、Primary電場と直交する方向に、電離層内だけで3次元的に閉じる、Hall-Pedersen current closure systemが形成されていることが強く示唆され、今後の電離圏3次元電流システムの研究に於いて重要なキーワードとなっていくことが予想される。
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