研究概要 |
バイカル湖北部のバルグジン山脈脊梁部に分布する圏谷より昨年度得られた^<10>Be・^<26>Al表面露出年代値を,バイカル湖の湖底堆積物から得られた古環境記録(例えばHoriuchi et al.,2000)と詳細に比較した。その結果,山岳氷河の後退とバイカル湖周辺の植生の変化に同時性があることが明らかになった。バイカル湖周辺は,最終氷期最盛期(LGM:18-24ka)には草本類に覆われており,その後退氷期に入ると水辺を好むヤナギ属や灌木類が発達し,後氷期(11.5ka以降)には現在の植生と同様な針葉樹類(タイガ林)に覆われた。^<10>Be・^<26>Al表面露出年代値より,低標高の山岳氷河はヤナギ属が発達した時代に融解しバイカル湖周辺に水を供給したことが分かった。また標高の高い圏谷の表面露出年代値は,バイカル湖北部の山岳氷河が11kaまでに完全に消滅したことを示しており,これに伴い周辺域の主要植生は針葉樹類へと変化した。本年度の地球化学会年会にてこうした成果を報告し,現在は公表論文を作成中である。 バイカル湖周辺での氷河の最大前進期を知るために,バイカル湖北部沿岸域の氷河性堆積物(末端モレーン)を対象に,^<10>Be・^<26>Al表面露出年代決定を行った。これらの末端モレーンは,これまでは酸素同位体ステージ2の時代-特にLGM-に形成されたと考えられていた。しかし,測定を行った10試料のうち8試料の年代値は,^<10>Be・^<26>Alともに60〜70kaに集中した。よってこれらの末端モレーンの地形形成年代は,酸素同位体ステージ2の時代では無く,その一つ前の寒冷期である酸素同位体ステージ4の時代であったと判断できる。これは,本研究にて初めて明らかになった事実である。
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