本研究の目的は、琉球列島に広がるサンゴ礁とその周辺堆積物が、どのような海洋表層環境を経て現在の姿に至ったのか、定量的なデータ(δ^<18>O・δ^<13>C・マイクロドリリングシステムの構築)を用いて復元することにある。その過程で、本年度は、平成16〜17年度のコア解析を効果的に実施するために、南琉球弧のコア試料CR-14のサンプリング・解析及びマイクロサンプドリリングシステムの完成・運行を実施した。 その中で、特筆すべきことは、マイクロドリリング装置による微少領域の研究である。δ^<18>O・δ^<13>C測定に用いる浮遊性有孔虫化石及び基質部分は、通常、堆積後の続成作用により固結するため、その中に含まれる浮遊性有孔虫を摘出できない試料が多数認められる。そこで、薄(厚)片化した固結試料から堆積物粒子レベルのマイクロサンプリングにより、δ^<18>O・δ^<13>C測定用の浮遊性有孔虫またはその他の化石粒子の粉末試料を採取できるよう、そのマイクロサンプリングシステムを完成させ、本システムにより採取した粉末試料のδ^<18>O・δ^<13>C測定を実施した。その結果、ミクロン単位で正確かつあらゆる表面形状の目的が達成することができた。これにより、固結した炭酸塩堆積物から分析を行いたい微少領域を正確にマイクロ単位でドリリングすることが可能となった。このことは、縁辺海域、特にサンゴ礁域の海洋表層環境を復元する上で効果的なツールとなるだけでなく、炭酸塩以外の地質試料にも適用可能であり、収穫が多かった。
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