研究概要 |
本年7月から9月の51日以上を費やし,本研究の対象地域であるザンビアにおいて,高圧マフィック変成岩類のエクロジャイト等の重要な露頭の調査を行なった.さらにザンビア南部においても調査を行ない,未知の島弧複合岩体の岩石を初めて採取した.今回の調査により,約400kgの岩石試料を採取し,古い島弧の試料20kgは航空便速達にて,それ以外の試料(エクロジャイト)は,船便にて日本に送付した. 島弧の岩石試料について,X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて,テクトニックに変形したときの温度圧力の復元と岩相の記載を行なった.さらにこの島弧の火成活動の年代を精密に決定するために,島弧の6種類の岩相についてU/Pbイオンマイクロプローブ(SHRIMP)により年代測定を行ない,1080〜1050Maという値を得た.この年代は,ジンバブエ北部に産出する同様の岩石の年代と区別がつかない.また,これらの岩石の変成年代は570Maと求められた.この年代は,本地域全体の変成年代とよく一致している.以上の結果は,我々が提唱しているアフリカ安定地塊どうしの衝突,つまりテクトニックセッティングと衝突年代についての仮説を,さらに拡張するためにとても重要である. この島弧マグマをもたらしたマントルの起源と年代を決定するため,これらの岩石からジルコンを拾い出し,本年4月に東京工業大学のイオンマイクロプローブにて測定を行なう.火成活動の年代とジルコン中のHf同位体組成は,島弧の火成活動が本地域で終息した時期(およそ1050Ma以降),火成活動の様式およびマントルの起源を理解する上で重要である.特に1050から570Maにおける本地域のテクトニクスについては,現在も未解決である.本研究の成果を元に,最低3本の論文が一流国際学術雑誌に投稿出版の予定である.
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