研究概要 |
本研究では,日本と韓国の大規模干拓堤防建設に伴う生物群集の応答の普遍性を明らかにし,それを第四紀に見られる氷河性海水準変動に伴う化石群集の変遷と比較することで,急激な環境変動に対する生物群集の応答の実態を追求することを目的としている.本年度は,2005年6月と8月に有明海奥部50定点と諫早湾干拓調整池16定点における採泥調査を行ない,潮止めから8年後の有明海および干拓調整池内の底生生物現存量の変化を調べた.その結果,有明海奥部では2004年11月まで多く見られたビロードマクラが,2005年6月にはほとんど得られず,さらに急激に底生生物相の変化が見られた.一方,調整池では2005年8月にアオコが大発生したことが確認され,淡水湖の水質汚濁が進行していることが明らかになった.採泥調査の結果でも,淡水生の貧毛類とユスリカ幼生などが得られるのみであり,非常に貧弱な底生生物相であることを確認した. また,韓国セマングム干拓地においては,2005年5月と12月に底生生物の定量調査を行なった.本海域では,2003年6月に潮受け堤防の北半分が閉め切られ,海域の塩分低下が確認されていたが,今回の調査により同海域の北側の干潟において二枚貝類の現存量が急激に減少していることが明らかになった. 本年度は,3年間の本研究期間の最終年度にあたっており,これまでに得られた標本類の整理を行った.韓国で採集された標本類は,当初からの取決めにより,韓国の研究施設に保管されることになっており,それらの標本整理・登録を2006年2月に行った.本研究の成果は,2005年7月に発行された日本ベントス学会誌に原著論文として発表した.
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