研究概要 |
本研究の目的は様々な腹足類の殻体構造と系統の関係を明らかにすることである。腹足類は、カサガイ類、古腹足類、ワタゾコシロガサガイ類、アマオブネガイ類、新生腹足類、異鰓類に大きく分けられる。これらの分類群の代表的な種を用いて、殻体構造の組成を比較した。その結果、原始的な腹足類では、殼体構造の組み合わせが多様であり、次第に単純な殻体構造の組成を持つ殼に進化した傾向が明らかになった。 最も原始的な腹足類とされるカサガイ類では、稜柱構造、交差板構造、葉状構造が最も普通に見られる構造であり、その他にも交差葉状構造、複合交差構造など特徴的な構造が見られる。さらに、稜柱構造は7タイプに細分でき、葉状構造も2タイプに分類できる。再検討の結果、カサガイ類には17の殻体構造が認識され、それらの17構造の分布をカサガイ類の5科44種で比較すると20通りの組み合わせに分類される(Fuchigami and Sasaki, in press)。このことから、カサガイ類は腹足類の中で最も殻構造が多様な分類群であることが分かった。 一方、他の原始的なグループの例として、従来殻体構造がほとんど研究されたことのない分類群であるワタゾコシロガサガイ類にも注目した。沖縄トラフの熱水噴出域から発見された新種のPyropeltidaeの殻体構造を詳しく研究した結果、従来の腹足類には全く知られていなかった構造の組み合わせが見つかった(Sasaki et al.,in prep.)。他のワタゾコシロガサ類とも大きくことなっており、この構造はPyropeltidaeの固有派生形質の1つであると解釈される。 その他の腹足類では、主に交差板構造を主体とする殻を持つ。特に、新生腹足類と異鰓類では基本的な構造の違いは乏しい傾向があるが、詳細な比較は不十分であり、来年度以降の課題である。
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