初年度に引き続き、下部マントル条件に相当する圧力-温度条件で合成した珪酸塩ペロブスカイトの鉄・アルミニウムの陽イオン占有席の決定および、その席占有率決定をするという目的を遂行するため、今年度は以下の点を行った。 1.前年度に鉄とアルミニウムを含む珪酸塩ペロブスカイトに対して確立した電子線チャネリング効果を利用したTEM-ALCHEMI(Atom Location by CHanneling Enhanced MIcroanalysis)法(2004年度国際誌に公表)で、3価陽イオンとしてアルミニウムのみを含む珪酸塩ペロブスカイト中のアルミニウム占有陽イオン席の解析を試みた。 2.フォーカスイオンビームミリング(FIB)を用いた高圧実験回収試料の薄膜作成法を確立するため、レーザー加熱ダイアモンドアンビルセルを用い高温高圧下で融解させたFe-FeO試料の異相界面近傍数ミクロンの範囲を薄膜化して、透過電子顕微鏡(TEM)で観察・解析した。 1に関しては、圧力約26GPa下の異なる温度1600、1750、1950℃で合成したいくつかのアルミニウムを含む珪酸塩ペロブスカイト試料について、TEM-ALCHEMI測定および結果解析を進行中である。ただ、電子線照射による珪酸塩ペロブスカイトの非晶質化が、昨年度測定した鉄を含む試料より顕著であり、陽イオン占有席の解析に充分な良質の特性X線スペクトルが、まだ得られていない。現在、試料を冷却してTEM観察することにより、非晶質化の軽減を目指している。2に関しては、電子線エネルギー損失分光法(EELS)で酸素の半定量分析に成功した。今後、珪酸塩ペロブスカイト試料に対してその手法を応用し、Fe-LedgeをALCHEMI解析する。 今年度で課題研究期間は終了したが、継続して上記の目的を達成するための作業を継続している。また、この研究課題を通して得られたTEM技術で、いくつかの共同研究(公表論文)も行った。
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