研究概要 |
本研究課題は、"水"を含むAl含有Mg-perovskiteの安定性と電気伝導機構を構造科学的な観点から解明し、Al含有Mg-perovskite中の"水"が下部マントルにおける電気伝導・ダイナミックスに果たす役割を明らかにすることを目的とする。今年度は、H_2Oの飽和条件下における下部マントルの安定相を調べるために,MgO-SiO_2-Al_2O_3-H_2O系の高圧実験を行った。生成物の多くは、約50μm程度の大きさを持つ単結晶物質であった。その単結晶の同定を、EPMAと単結晶X線回折法により行った。EPMA分析の結果、28.46wt%MgO、48.69wt%SiO_2、7.73wt%Al_2O_3(合計84.88wt%)という結果を得た。100wt%からの不足分をH_2Oとすれば、生成した単結晶試料の化学式はMg_<1.25>Si_<1.43>Al_<0.27>H_<2.97>O_6と計算できる。単結晶X線構造解析の結果、生成した単結晶試料は、三方晶系(空間群P3^^-1m)[格子定数a=4.8379(4)Å,c=4.3236(4)Å,γ=120°]に属し、高圧含水珪酸塩phase Dと同一の結晶構造を持つことが分った。とのように、H_2Oの飽和条件下では、perovskite相は生成せず、phase Dが主な生成相であることが分った。今後、高圧実験から、系中のH_2Oがどのような比率の場合に,perovskite相が安定に存在するかを検討する必要がある。
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