研究概要 |
プラズマ中ではミクロンサイズの微粒子は負に帯電し、その電荷量は|Q|〜10^4eと非常に大きいことが知られている。個々の微粒子には外部から印加された静電ポテンシャルや摩擦力としてのイオンドラッグ力のほか、他の微粒子との相互作用としてクーロン斥力や、航跡場やshadow効果による力などが作用してていると考えられている。航跡場形成や,shadow効果にはイオン流が大きく関与しているので、ここではまず微粒子近傍でのイオンの振舞いに着目し、イオンが非圧縮性の一様流体の速度成分を持つと仮定して流体項を含んだ運動方程式を解くという新しい理論モデルを提案した。流体項には微粒子が有限の半径を持つという情報が含まれている。本研究では微粒子近傍におけるイオンの軌道を詳細に調べることができ、イオンが微粒子の下流で微粒子表面に後戻りするような軌道を描くために微粒子の下流側に仮想陽極とも言うべきイオンの高密度領域が形成されることを示した。方程式を詳細に議論することによって、仮想陽極が形成される条件についても明らかにすることに成功した。この仮想陽極は流体シミュレーションでも形成が確認されているが、本研究では流体シミュレーションのような膨大な計算量を必要とせずに同様の結果を再現することに成功したことになる。この仮想陽極が微粒子間相互作用を媒介し、クーロン結晶の構造を決めると予想される。また、磁場が印加された系についても同様の考察を行い、磁場によって軌道を曲げられたイオン微粒子に衝突することによって微粒子に回転を与える可能性を示唆した。以上の結果を物理学会や各種の研究会・会議において発表することができた。
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