本研究では、高温プラズマの内部構造を調べる手法として、計算機トモグラフィー装置とその解析コードの開発を行った。 昨年度までに開発した軟X線ピンホールカメラを用いて、大阪大学工学研究科原子分子イオン制御理工学センターの磁場反転配位(FRC)プラズマ装置(FIX)において測定を行い、FRCプラズマから輻射される軟X線の空間分布とその時間発展を測定した。軟X線信号上の雑音成分が信号強度の約10%と大きいことから、軟X線では詳細な再生像を得ることが難しいことが明らかになった。そのため、軟X線ピンホールカメラを可視光測定ができるように改造し、可視光の再生像を得る実験を行った。その結果、FRCプラズマは中心で光強度が高く、周辺では発光が弱いという内部構造をしていることを明らかにした。また、同じ型のピンホールカメラを増設し、2つの装置断面に取り付け、複数断面の計算機トモグラフィーを同時に行うという計測システムを立ち上げた。このシステムを用いた測定により、傾斜不安定性などの揺動が発生していないことが分かった。 これらの研究に加え、昨年度に開発した特異値分解放を用いて信号を解析する計算コードを用いて解析を行った。先に述べたように、FRCプラズマでは、プラズマ中に十分な信号強度を持った揺動成分は存在しなかったので、トカマクプラズマの実験データの解析を行った。京都大学理学部のWTトカマクで発見された、通常のトカマク装置で観測されるものとはやや異なった鋸歯状崩壊の実験デーダを解析したところ、この崩壊を駆動しているのはフーリエモード数m=3のMHDモードであることが分かった。また、このモードに遅れてm=2モードも出現していることが明らかになった。 このように、我々の開発した測定装置および解析コードが、高温プラズマの挙動やプラズマ中に存在する揺動成分を明らかにするのに役立つことを示すことができた。
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