直線型高密度プラズマ発生装置HYPER-Iにおいてヘリウムプラズマ中に自発的に形成されるプラズマホールの詳細な電位分布を計測するため、角度変位可能な駆動機構に取り付けたエミッシブプロープを用いてプラズマ電位の二次元計測を行った。プラズマ電位は軸対称な釣鐘型をしており、中心部に電子温度の5倍程度の大きな正の電位が局在している。測定した二次元電位分布とポアソン方程式を用いた解析により、ホール部のプラズマは周辺部のプラズマの1000倍程度準中性条件が破れた非中性プラズマになっていることがわかった。また、ホール部のイオンリッチプラズマと周辺部の準中性プラズマの間には電子リッチな層があり、磁場を横切る方向に電気二重層構造が形成されていることがわかった。また、電位とイオン密度が急峻な勾配をもつ領域において強い揺動が観測された。 次にプラズマホール構造形成のガス種依存性を調べるため、アルゴンプラズマを使った実験を行った。外部パラメータ(圧力、磁場強度、入射マイクロ波パワー)を横断的に変化させることで、アルゴンプラズマ中におけるプラズマホール形成を初めて観測した。この事実はプラズマホール形成の背景に普遍的な物理が存在していることを示唆している。 アルゴンプラズマホールに対して分光計測を行った結果、ホール部ではイオン密度だけでなく中性粒子の密度も減少しており、平均自由行程より短いスケールの構造を形成していることがわかった。
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