核融合科学研究所の直線型高密度プラズマ生成装置HYPER-Iにおいて、中心軸上に密度空洞を伴う定常渦構造(プラズマホール)の自発的形成を観測した。プラズマホール構造には、ホールプラズマとそれを取り囲むプラズマの境界に非常に急峻な密度勾配が存在する。また、超音速の渦運動を駆動する強い電場や、磁場に垂直・平行両方向の流れのシアーも存在し、様々な不安定性が励起されている可能性がある。ラングミュアプローブを用いて、プラズマホール構造に伴う密度揺動(イオン飽和電流揺動)の空間分布を測定したところ、低密度のホールプラズマ領域では非常に強い間欠的な振動が観測された。また、急峻な電位・密度勾配が存在するr=20〜30mm付近で20kHz程度の低周波領域にブロードなスペクトルをもつ強い揺動が観測された。この領域は準中性条件の破れたプラズマと準中性プラズマの境界にあたるため、そのような界面の不安定性という観点からの研究が今後期待される。 次に、プラズマホール構造の形成過程について実験研究を行った。プラズマホール構造はあるマイクロ波パワーの範囲で安定に形成され、パワーの増減によって消滅することがこれまでにわかっている。プラズマホールの形成過程を詳細に調べるために、マイクロ波パワーを変調することによってプラズマホール構造形成の制御を試みた。マイクロ波パワーを増加させることで、一様なイオン密度分布からプラズマホール構造を特徴づける密度空洞が形成される様子が観測された。一旦ホール構造が形成されると、その密度勾配はマイクロ波パワーにほとんど依存していなかった。また、空間電位は密度空洞が形成され始めるとともにプラズマの中心部から増加し、釣鐘型電位分布を形成することがわかった。プラズマホールにともなって、粘性の効果によるものと考えられる径方向に磁場を横切るイオンの速い流れが観測された。
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