研究概要 |
平成15年度の実績は以下の2点にまとめられる。 1)整形されたレーザー場中におけるエタノールの解離性イオン化反応 エタノールのC-C-O骨格の中の、C-O切断とC-C切断に着目すると、フラグメントイオンの生成比[C_2H_5^1]/[CH_2OH^+]は、チャープ率の大きさ|lc|を増やすと|lc|〜9.5x10^<-3>ps^2で一定値に達し,そのときの生成比はフーリエ限界パルスの時と比べるとほぼ4倍となった。チャープの向きによる違いが見られないことから、周波数の時間変化の影響よりも、レーザーパルスの時間幅が生成比を決定する主要な要因であると考えられる。チャープパルスの時間幅は、|lc|〜9.5x10^<-3>ps^2の時、760fs(FWHM)となる。このことは、C-O結合の切断にとっては、760fsより時間幅の長いレーザーパルスが有効であることを示している。すなわち、核波束は1価の状態で形成されるレーザー誘起ポテンシャル曲面(LDPES)においてC-C結合が切断される方向へ動くが、LDPESが維持される時間が760fsより長くなると、核波束はC-O結合の切断方向へも分岐していくことが示唆された。さらに、焼きなまし法を用いて、生成比[C_2H_5^+]/[CH_2OH^+]を最大にするようにパルス波形の最適化制御を行い、チャープパルスの結果との対比を行った。 2)質量選別された分子・クラスターイオンの強レーザー場誘起反応ダイナミクス タンデム質量選別器を用いてアニリンカチオンにアンモニアの付着した水素結合クラスターの強レーザー場誘起反応のサイズ依存性を見出した。量子化学計算によって親イオン、生成物イオンクラスターの構造を推定するとともに、予測される反応中間体の構造、各反応チャンネルの解離エネルギーを計算し、いかにしての反応が起こるかが推定された。
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