本年度の研究実施計画は、赤外キャビティリングダウン分光法(IRCRS)の確率、及びエレクトロスプレーイオン化法(ESI)装置の開発の二点であった。 1.IRCRSの確立 (1)IRCRS装置の検出限界の見積もりを行った。長さ70cmのガスセルの両端に高反射率凹面鏡(R〜99.95%)を設置しキャビティを構成し、キャビティの一端より3.3μmのレーザー光を入射した。リングダウン波形の時定数フィティングを行った結果、キヤビティー往復あたりの光減衰率は880±16ppmであり、S/N比が1での検出限界は約60ppmであると見積もられた。 (2)常温気相ピロール分子のNH伸縮振動の測定を行った。上記のキャビティ内部にピロールを0.25〜1Torr封入し測定を行ったところ、ピロール圧力とQ枝吸収係数が比例関係となり、本装置でLambert-Beer則の成立を確認した。また、測定されたスペクトルより算出されたQ枝の吸収断面積(4.1±0.3)x10^<-19>cm^2は文献値とほぼ一致し、本装置の定量測定信頼性を確認した。 (3)低濃度気相分子種の測定方法の確立を目的として、超音速ジェット中に生成する孤立気相ベンゼンのCH伸縮振動の測定を行った。3.3μm付近に3本のバンドが観測され、赤外吸収による光減衰率は約200ppmであることがわかった。ジェット中のベンゼン濃度は10^<-9>mol/lであることから、(1)の検出限界から10^<-10>mol/lの低濃度まで観測可能であることがわかった。 2.ESI装置の開発 上記のIRCRSの開発が途中段階であること、及びESIによる分子濃度が超音速ジェット中のものの100分の1以下であることより、本年度はESI装置の開発には着手していない。これは来年度の課題である。
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