研究概要 |
トルエンを含むスピロペンタシラジエン1の単結晶のX線結晶構造解析に成功し、ヘキサンを含む1の単結晶中の構造とは異なり、1の2つのケイ素-ケイ素二重結合回りの構造が顕著に異なることを見出し、スピロペンタシラジエンの骨格が比較的柔軟であることを明らかにした。またスピロペンタシラジエン1の光反応により生成したヘキサシリルビシクロ[1.1.0]テトラシラン2の別途合成を検討した。化合物2の前駆体である対応する1,3-ジブロモシクロテトラシランのKC_8を用いた還元縮合により2を黄色結晶として単離することに成功し、その分子構造をX線結晶構造解析で決定した。溶液中化合物2の4員環は速やかに反転しており、温度可変NMRを用いて環反転の活性化エネルギーが6kcal/mol程度であることを明らかにした。化合物2の環反転の活性化エネルギーは橋頭位に芳香族置換基を持つビシクロテトラシランのもの(15kcal/mol)に比べて小さく、これは2の橋頭位に導入されているシリル置換基の電子的効果により環反転の遷移状態が安定化されているためであると推定した。本研究に関連して、累積したケイ素-ゲルマニウム二重結合を持つ2-ゲルマジシラアレンの合成、ケイ素表面のモデルとなる二環式ジシレンの合成に成功した。また種々の配位子をもつジシレン-パラジウム錯体の合成およびX線結晶構造解析に成功し、パラジウム上の配位子がより電子求引性のものほど、構造がよりπ錯体的になることを見出し、配位子の電子的効果によりジシレン錯体の電子状態を制御できることを明らかにした。
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