オリゴシランの物性制御を目指したケイ素主鎖の立体配座制御方法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15750032
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 辻 勇人 京都大学, 化学研究所, 助手 (20346050)
• キーワード: ポリシラン / オリゴシラン / σ共役 / 立体配座 / 光物性 / UV吸収・MCD / 有機ケイ素化合物

研究概要

オリゴシランにおけるケイ素鎖の立体配座を精密に制御すべく、2本のテトラメチレン鎖を有する双環式トリシラン、すなわち11,11-ジメチル-1,6,11-トリシラ-ビシクロ[4.4.1]ウンデカンを構成ユニットとしたオリゴシランの合成について検討した。この化合物の環構造は、ルテニウム-カルベン錯体(いわゆる第2世代Grubbs触媒)を用いた閉環メタセシスにより効果的に構築されることが明らかとなった。
このユニットを用いたペンタシラン化合物(11,11-ジメチル-1,6-ビス(トリメチルシリル)-1,6,11-トリシラ-ビシクロ[4.4.1]ウンデカン)は、X線結晶構造解析の結果5つのケイ素がすべてanti配座で配列した、all-anti配座を有することが明らかとなった。また、この化合物の常温におけるUV吸収を測定すると、極大吸収波長λ_<max>=253nm、吸光係数ε=37,700M^<-1>cm^<-1>、半値幅HBW=22,000cm^<-1>であり、立体配座が制御されていないペルメチルペンタシラン(n-Si_5Me_<12>;λ_<max>=250nm、ε=19,000M^<-1>cm^<-1>、HBW=33,000cm^<-1>)に比べて、若干長波長シフトしたシャープかつ強い吸収極大を示すことが明らかとなった。また、本all-antiペンタシランはUV吸収に対応するMCD(磁気円二色性)のシグナルを与えないことから、本ペンタシランの立体配座は溶液中でも精密かつ強固にall-antiに固定されていることが確認された。
以上のように本研究では、双環式トリシランユニットはオリゴシランの立体配座を厳密にanti配座に制御し、σ共役の延伸に有用であることを見いだした。

研究成果

• [文献書誌] Mallesha, H., Tsuji, H., Tamao, K.: "UV Absorption and mass Spectra of n-Alkylsilyl End-Capped anti, cisoid-Alternating Oligosilanes up to Docosasilane (Si_<22>)"Organometallics. (掲載決定). (2004)
• [文献書誌] Tsuji, H., Michl, J., Tamao, K.: "Recent Experimental and Theoretical Aspects of the Conformational Dependence of UV Absorption of Short Chain Peralkylated Oligosilanes"J.Organomet.Chem.. 685・1-2. 9-14 (2003)
• [文献書誌] Seki, S., Tagawa, S., Tsuji, H., Tamao, K.他, 計7名: "Transient absorption spectroscopy of radical ions of rigid anti- and syn-tetrasilane"Phys.Chem.Lett.. 380・1-2. 141-145 (2003)
• [文献書誌] Tsuji, H., Terada, M., Toshimitsu, A., Tamao, K.: "σ-σ^* Transition in anti, cisoid Alternating Oligosilanes : Clear-Cut Evidence for Suppression of Conjugation Effect by a cisoid Turn"J.Am.Chem.Soc.. 125・25. 7486-7487 (2003)
• [文献書誌] Casher, D.L., Tsuji, H., Tamao, K., Michl J.他, 計11名: "The Disilane Chromophore : Photoelectron and Electronic Spectra of Hexaalkyldisilanes and 1,(n+2)-Disila[n.n.n]propellanes"J.Phys.Chem.A. 107・18. 3559-3566 (2003)