研究課題
これまで我々は、ヘリセンジオールをさまざまな溶媒から再結晶することにより包接結晶や超分子結晶を得、その構造をX線結晶構造解析によって調べてきた。その中で、取り込んだ溶媒の種類やヘリセンジオールの立体構造で超分子構造が大きく異なり、ヘリセン骨格の構造も大きく変化することを明らかにしてきた。一方、ヘリセンの芳香環の外縁部に多くのアルキル基を導入し、一般の有機溶媒に非常に溶けやすい性質を持つヘリセンの合成に最近成功した。溶解度の高いヘリセンが合成できれば、これまでに報告例のない三層以上に縮環したヘリセンが得られ、ナノテクノロジーの一分野となる「分子スプリング」や「分子コイル」の創製に発展できると考え、現在研究を行っている。今年度は、ラセミ体、P体、M体それぞれのヘリセンジオールを出発物質として反応を行い、ヘリセン骨格を有するポリマーを合成し、その機能・物性についての研究を行うことにした。合成の際にはスペーサーとしてシリル基を導入することで、ポリマーの溶解性の向上をはかった。その結果Mwが10000程度の分子量を持つポリマーが得られ、熱分析の結果から高い熱安定性を有することが明らかになった。しかし、吸収スペクトル、CDスペクトルなどの光学特性の結果は、ポリマーの物性がモノマーに類似したものであることを示し、ヘリセン骨格を多数連ねることによる新たな物性の発現を果たすことは出来なかった。一方、二重らせん構造を持つDNAは平面構造を有する分子と相互作用(インターカレーション)を示すことが知られているが、ヘリセンのようならせん構造を有する分子との相互作用は全く報告されていない。そこで、新規に合成したジメチルアミノ基を有するヘテロヘリセンとDNAとの相互作用を調べたところ、P体のヘリセンが左巻きの二重らせん構造を有するZ型DNAに特異的に取り込まれることが明らかとなった
すべて 2004 その他
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of American Chemical Society 126(21)
ページ: 6566-6567
Phosphorus, Sulphur, and Silicon, and the Related Elements (in press)