研究課題
これまで我々は、ヘリセンジオールをさまざまな溶媒から再結晶することにより包接結晶や超分子結晶を得、その構造をX線結晶構造解析によって調べてきた。その中で、取り込んだ溶媒の種類やヘリセンジオールの立体構造で超分子構造が大きく異なり、ヘリセン骨格の構造も大きく変化することを明らかにしてきた。一方、ヘリセンの芳香環の外縁部に多くのアルキル基を導入し、一般の有機溶媒に非常に溶けやすい性質を持つヘリセンの合成に最近成功した。溶解度の高いヘリセンが合成できれば、これまでに報告例のない三層以上に縮環したヘリセンが得られ、ナノテクノロジーの一分野となる「分子スプリング」や「分子コイル」の創製に発展できると考え、現在研究を行っている。今年度は、ラセミ体、P体、M体それぞれのヘリセンジオールを出発物質とし、エチレンをリンカーとしたヘリセン分子のダイマーを合成した。その結果、ヘリセン分子のモノマーの比旋光度が約2200°であったのに対して、ダイマーの比旋光度は約3600°まで上昇した。分子量の違いを勘案すると、その比旋光度は約1.6倍に上昇した。この上昇分がエチレンをリンカーとしたことによる効果であり、モノマー間を共役結合で結ぶことによりモノマー間の相互作用が現れた結果と考えられる。さらに多くのヘリセン骨格を多数連ねることにより、非常に高い旋光度が発現し、偏光フィルターなどへの応用などが期待できると考えている。一方、二重らせん構造を持つDNAは平面構造を有する分子と相互作用(インターカレーション)を示すことが知られているが、ヘリセンのようならせん構造を有する分子との相互作用はほとんど報告されていない。そこで、リンカーの長さによって分子のらせんピッチをコントロールできる両末端を架橋したヘリセンを用い、らせんピッチと認識能の関係を調べた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Phosphorus, Sulfur, and Silicon and the Related Elements 52・12
ページ: 1499-1500