研究課題
研究の最終年度にあたる本年度は、フラロデンドロンの物性と機能に重点をおき、以下の研究を行った。(1)フラロデンドロンの、両親媒性化合物としての性質と、フラーレン部位の親炭素材料性を最大限に活用することを目的とし、フラロデンドロンと単層カーボンナノチューブの複合化を試みたところ、通常、可溶化、可分散化の困難なカーボンナノチューブの可溶化に成功した。複合体の構造を各種スペクトルおよびAFM、TEM、SEM観察により明らかとし、ナノチューブの周りにフラーレン、そして、そのさらに外側にデンドリマーが配置された階層構造からなる、新規な複合体であることを見出した。こうした研究は、今後、光電変換素子などへと応用することが可能であり、フラロデンドロンの機能研究において重要である。(2)水溶性フラロデンドロンの光物性について詳細に検討する中で、水中における光誘起電子移動を伴った電荷分離状態の生成を明らかとした。水中における、電荷分離状態の生成は、人工光合成系構築の上で非常に重要であるが、本研究者の開発したフラロデンドロンは、レーザー分光による研究によって非常に高い量子収率(Φ=0.83)で電荷分離状態となることが明らかとなり、今後、太陽電池材料をはじめとする人工光合成系の構築へ向けた基礎的な知見としてきわめて重要な結果が得られた。(3)デンドリマーと銀ナノ粒子との複合化について明らかとし、その光物性の検討を行った。まずはじめに、基礎的な知見として、アントラセンを焦点部位に持つデンドリマーを用いた複合化を行ったところ、デンドリマーによる、銀ナノ粒子の安定化と、光還元作用が明らかとなった。そこで、さらに、フラロデンドロンを用い、銀ナノ粒子の作製を行ったところ、複合体が得られた。構造はTEM観察により明らかとし、物性は、吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを用いて評価した。今後、光電変換材料への応用を指向した物性・機能の検討を行う予定である。
すべて 2006 2005
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