本研究は、フォトクロミズムに伴う構造変化を利用して、生体関連物質の機能を可逆的に制御することを目的として研究を行っている。本年度は、生理活性機能として、酵素反応に焦点をしぼり、ターゲットの酵素蛋白質として、構造・活性中心などが解明されているニワトリ卵白リゾチーム(EC.3.2.1.17)を選んだ。光応答基としては、代表的なフォトクロミック化合物のひとつであり、フォトクロミズムに伴う構造変化が比較的大きいアゾベンゼン誘導体を用いた。 まず、リゾチーム構成するアミノ酸残基のカルボキシル基へのアゾベンゼン誘導体の導入法、及び修飾蛋白質の精製法を確立した。そして、リゾチームは10個のカルボキシル基を有するが、Asp101と、C末端に位置選択的にアゾベンゼンを導入した光応答性リゾチームを合成した。次に、この光応答性リゾチームの光反応挙動を調べた結果、可逆的制御に不可欠な光異性化反応の繰り返しに対する耐久性が優れていることがわかった。また、フォトクロミズムに伴い、CDスペクトルには大きな変化は現れないこと、蛍光強度はおよそ2倍変化することがわかった。次に、Micrococcus luteusの細胞壁を基質として用い比活性を調べた結果、導入したアゾベンゼン部分の光異性化反応に伴って、酵素反応の動力学パラメータが変調できることを確認した。単純基質であるキトサンヘキサマー、ペンタマーも基質とした場合の酵素反応は検討中である。
|