研究課題
(1)出発物質に易溶性の鉄アミド錯体を用い、硫黄元素、チオ尿素誘導体、およびチオラート塩の代わりにチオールを作用させる、非極性溶媒で均一に反応を進行させる新しいクラスター合成方法を開発し、結果としてニトロゲナーゼのP-cluster[Fe_8S_7]骨格を構築することに成功した。合成した[Fe_8S_7]錯体は、まさに生体内に含まれるP-clusterの骨格そのものであり、タンパク中でしか安定に存在し得ないと考えられてきた比較的不安定な骨格が、溶液中で準安定なものであることを示すとともに、生合成の過程が明らかにされていなかった天然のP-clusterが、自己集合反応から生成しうることを証明するものである。電気化学的測定から、[Fe_8S_7]クラスターは二電子までの可逆な還元反応を行えることが明らかになった。すなわち、天然の還元型P^N-clusterと同じ酸化状態のクラスターを系中で発生させることが可能である。また、[Fe_8S_7]クラスターのESRスペクトル、磁化率測定から、このクラスターは基底状態で反磁性であることも判明した。(2)研究対象をニトロゲナーゼにとどめず、酵素ヒドロゲナーゼに関連する水素のヘテロリティックな開裂反応、すなわち水素分子をプロトンとヒドリドに分割する反応を達成するために、新しいW-Ru二核錯体を合成し、水素分子のヘテロリティックな活性化を達成した。本研究で達成した反応は、水素とプロトン/ヒドリドの変換を可逆に行うものであり、かつ異種金属二核錯体としては初めての例でもある。その反応機構の多くも解明した。(3)本研究と関連して、易溶性の嵩高いチオラートの利用も種々検討し、低配位の配位不飽和Ru(II)錯体を合成し、その反応性を明らかにした。チオラートが可逆に金属に結合できることを初めて証明する成果でもある。
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Organometallics 24(印刷中)
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