研究概要 |
研究代表者は、これまでのAu-Ru-Au及びRu-Au-Ru 3核錯体の発光メカニズムに関してより確かな実験データを得るためにAu-Phen-Au及びPhen-Au-Phenを新規に合成した。これら金(I)有機金属錯体の光物性測定結果から、これら金(I)エチニルフェナントロリン錯体が緑色リン光発光を室温条件下で示すことを明らかにした。(Chem.Lett., 2004)この発見は、既知のアニオン性金(I)錯体では殆ど報告例が無く、そのこと自体が特筆すべき成果である。更に、先のルテニウム(II)-金(I)複合錯体において仮定した金(I)錯体ユニットからルテニウム錯体ユニットへのエネルギー移動過程を支持する明確な証拠を得たことにもなる。 研究者は、同時にルテニウム錯体ユニットの分子構造が非対称となるエチニル基を3,5位に有するルテニウム錯体を新規に合成し、非直線型Au-Ru-Au 3核錯体の合成に成功した。この研究の意義は、ルテニウム錯体ユニットの構造が超分子全体の電子構造に与える影響を考察する上で非常に重要である。この問題を明らかにするために、この非直線型3核錯体の光物性測定を行った。特に注目すべき結果は、この非対称型錯体では対称型錯体と異なり二つのエチニル部位は独立した励起状態の電子配置を持ち、フェナントロリン配位子全体に渡る共役系が形成されていないことが推定できたことである。(第53回錯体化学討論会発表)このことは非対称型錯体ユニットを組み込むことによって超分子細線の更なる機能付加や整流作用を作り出す可能性を示したことになる。 又、次なる段階としてRu-Au-Ru-Au-Ru超分子錯体の合成を進めており、目的化合物の合成には成功し、現在は精製法の検討を行っている段階にある。
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