研究概要 |
前年度に遂行した研究から見出された、良質な多結晶試料が得られるMgCl_2-NaCl-KCl-MgB_2O_4-CuCl_2系を原材料とし、単結晶が得られるかどうかの検討を行った。溶融塩の均一な組成と温度を保つため、電極を回転させて溶融塩を均一化させ、また、ポテンショメトリ等の電気化学測定を行いつつ、電解電圧を最大10ボルト程度まで変化させ、合成を行った。さらに、出発物質を様々な化合物(例えばハロゲン化マグネシウムー般)に変える試みも行った。電気化学合成では、直流電流でなく、時間的に変化する電流(例えばパルス電流)を反応電極に印加することにより合成が行える場合があるため、この合成法の可能性について検討を着手した。現在のところ、以上のような試みを行いつつあるが、単結晶は得られていない。 ただし、この研究から、本原材料を用いることにより、通常の固相反応で得られるMgB_2反応温度である500℃より下の温度領域(450℃近傍)でMgB_2が生成することを見出した。このことは、本研究提案における電気化学合成法が、従来の合成法に比べてエネルギー利用効率の高い手法であり、応用に有利であることを示す。本結果については現在論文投稿準備中であるが、2004年9月に行われた国際会議において一部を口頭発表した (Formation temperature of MgB_2 in the electro chemical synthesis from fused molten salts, K. Yoshii and H. Abe, Fourth International Conference on Inorganic Materials, Antwerp, Belgium)。 また・上述した出発物質であるMgCl_2-NaCl-KCl-MgB_2O_4-CuCl_2系を用いることで可能となった、ステンレス上のMgB_2めっき薄膜作製手法の結果を論文にして発表するとともに、米国特許出願を行った(両者とも次ページ11.研究発表参照)。
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