研究概要 |
本研究は、金属原子がC_<60>の結晶中にドープされたフラーレン化合物の超伝導性を不純物をプローブとして調べることを目的としている。炭素中での不純物ドーパントの価数に関する情報を得るため、炭素の同素体である高配向熱分解グラファイトを対象とし、γ線摂動角相関法による実験を行った。プローブの試料への導入法としては、原子炉で生成された核分裂片を電場で加速して向位体分離し、目的核種の^<140>C_s(遂次β崩壊によって^<140>Ceが生成される)を植え込む手法を採用した。角相関測定では外部磁場を印可し、ラーモア歳差運動の周期からプローブ核の電子状態を調べた結果、Ce原子が複数の酸化状態をとっていることが示唆された。現在これを報文にまとめる作業を行っている。また、同手法によってフラーレンC_<60>分子とプローブとして導入した^<140>Ceとの相互作用を観察した結果、前年度の実験結果を再現することを確認した。即ち、高温で徐々に減衰する角相関の異方性が低温では急激に緩和する。これはプローブ核と核外場との相対的な熱運動が低温になる程抑制され、相関時間が長くなる現象を示唆している。この振舞いが不純物として極微量に存在するプローブ特有の現象であるかどうかを調べるため、金属ランタンとC_<60>粉末との直接固相反応によって、超伝導状態を発現するLa_3C_<60>を生成し、原子炉において中性子照射[^<139>La(n,γ)^<140>La反応]を行い、同じプローブで角相関測定を行った。データ解析の結果、電場勾配による電気四重極相互作用を示唆する静的な振動成分が時間スペクトルに現れており、極微量の状態とは異なる観測結果が得られた。今後、外部磁場を印可した実験を行うことにより、超伝導性と試料中でのプローブ原子密度についての詳細な情報が得られるものと期待される。上記の研究成果の一部は2004年の8月と9月に開催された二つの国際会議で報告した。
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