本研究ではCu-K励起の高エネルギーX線光電子回折法を用いたリアルタイム界面分析・評価法の開発として、埋もれた界面に対して秒単位での光電子回折パターン(角度分布パターン)の取得を目的とした。しかしながら別途行っていた8keVの光電子測定をも可能とする高耐圧アナライザーの開発が今年度まで遅れたために、本年度はCu-K励起用の高耐圧アナライザーの評価実験を中心に行い、Cu-K励起光電子分光・回折測定およびリアルタイム測定などの要素技術の評価・改良を行った。 新たに開発した9kV高耐圧アナライザーを使い、まず実験室系のCu-K X線管励起でのXPS測定を行った結果、8keVの光電子まで十分測定できるがわかった。その一方でCu-L線の妨害が著しいことと光強度確保のために試料回転等ができないほど光源を近づける必要があることがわかった。一方、マルチエネルギー強力X線源ではCu-L線の妨害は皆無であることがわかったが、試料位置での光強度がまだ不十分であり、運動エネルギー7keV以上の光電子は新検出器の暗信号が増大したこともあり、リアルタイム測定に十分な強度・精度での測定にいたっていないことがわかった。ただし、5keV以下の領域では現装置で光電子回折まで測定可能であり、Ag-XPSより3〜4eVの半値幅の4.2x10^Λ10cpsの強度のX線が試料面上で得られることがわかり、SrTiO3(100)のTils光電子回折パターンの測定を行った。検出器および光源改良は現在も継続中である。また通常のAl-K励起でのリアルタイム測定は1msまで可能であることを確認した。さらには、Al-K光源による本装置での全反射光電子分光測定や差分光電子ホログラフィー測定などの高機能化測定についても実験を行い、薄膜界面解析等の要素および周辺技術の開発を行った。
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