研究概要 |
本研究は,都市大気中の環境微粒子について,キャリアーとしての微粒子の組成から起源を推定した上で,その粒子に付着している「発ガン性が指摘されている有害有機成分」や「鉄などの金属元素を含む微粒子との複合微粒子」に焦点を合わせた起源別複合汚染評価法を開発することを目的としている。この研究目的を達成するために,本年度は,(1)環境微粒子の携帯型分級捕集法の検討とEPMA法を用いた粒別起源解析,ならびに(2)TOF-SIMS法を用いた微粒子上有機物質測定に関する研究を進め,以下の様な研究成果を得た。 研究課題(1)について:環境微粒子に吸着した有害有機物質や,付着した他起源の微小粒子との複合汚染に注目し,その粒子の発ガン性などの人体影響や発生起源・輸送過程についての詳しい情報を得るためには,携帯型の分級捕集法に関する検討が必要となる。したがって本研究では,都市域の大気環境微粒子をSPMやPM_<2.5>などの様に分級し,かつ金属板上に直接捕集できる携帯型捕集装置の検討・試作を行なった。また,検討結果に基づいて捕集された微粒子に対して,EPMA法による粒別起源解析法を適用することで,試作した捕集装置の評価を行い,さらに複合微粒子の粒子構造を詳細に解析した。その結果,本研究で試作した携帯型捕集装置を用いれば,研究目的を十分に満足する都市大気中環境微粒子の分級捕集が可能であることが分かった。同時に,本試作装置により捕集された複合微粒子の主たる発生起源などに関する重要な知見を得た。 研究課題(2)について:研究課題(1)で検討した環境微粒子の携帯型捕集法に基づき捕集された環境微粒子試料に対して,TOF-SIMS法を適用し,有害有機物質の同定を行なった。また,特定の有害有機汚染物質のフラグメントピークなどを用いて,捕集した個々の粒子に吸着する有機物質分布情報を得,質量スペクトルの特徴抽出に基づく粒別起源解析を行った。その結果,実際の都市大気環境中から,鉄粒子表面にディーゼル排気微粒子が吸着した複合微粒子が見出された。
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