研究概要 |
低原子価チタンとアルキンとから得られるチタン-アルキン化合物はジアニオン等価体としてこれまでにケトン、アルデヒド等の求電子試剤との反応が行われており、種々の有機化合物を効率的に合成する出発原料として極めて有用である。しかしながら、これまでの研究において合成されているチタン-アルキン化合物は熱的には不安定であり、-30℃以下という低温条件下でのみ安定に存在するという問題点があり、有機合成上への利用においては反応基質、反応条件等限定されていた。本研究では、チタンテトライソプロポキシドを2等量のn-ブチルリチウムでTHF中還元し、アルキンとの反応によりチタン-アルキン化合物を発生させることによって50℃までの温度条件下における熱的安定化に初めて成功した。チタン-アルキン化合物の生成は、反応混合物を加水分解、あるいはアリルハライドと反応させることによって得られる生成物をGC,MS、 NMR分析することによって確認した。さらに本研究においては、この熱的に安定化されたアセチレン-チタン化合物を反応基質として用い、ニッケル錯体触媒存在下、アリールヨウ化物との反応を検討した。その結果、クロスカップリング反応が進行し、3置換-、及び4置換オレフィンが高収率で得られることを見いだした。本研究は前周期金属-アルキン化合物を用いた触媒的クロスカップリングの初めての例である。また本反応においては内部アセチレン1分子と2分子にイソプロピル基から成る3,6-ジヒドロー2H-ピラン誘導体が副生成物として得られることも確認した。
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